Many and Very

いつ死んでもいいように、なるべくがんばって生きたいだけ。

夫がダニに噛まれた話

先日、夫のH氏が「知り合いの酪農家さんが牧草地にするために山を8ちょう」切ったから、捨てる木勝手にもらっていっていいってさ、俺もらいにいってくるわ」と私に言った。

 

9月に建設予定の我が家、薪ストーブを設置する予定になっているんだけど、それが決定してから夫から切り出される話題の半分は薪や薪ストーブに関連したものとなっている。

 

それをきいたとき、「山を八丁?ちょうってなに?」と質問したが、「8ちょうは8ちょうだよ」などとはぐらかし、詳しい広さは答えてもらえなかった。

 

とにかく夫は農家さんがくれる木をもらいに出かけて行き、その夜マダニに噛まれたのである。

 

 

その夜私はこども2名と寝落ちして8時半に就寝しており、9時すぎに夢うつつに夫が外出から帰宅して、そしてシャワーを浴びている音を聞いた。

 

あ、H氏かえってきたんだぁ・・なんてぼんやりしたあとにまた眠りに落ちしばらくたったときに

 

「U子、ちょっと、ちょっと、ちょっときて・・・」という控えめな声でうっすら目をあけると、黒のTシャツを着ている夫がドアを半開きにして立っていた。

 

夫が寝ている私を起こすことは滅多にないので、私は何が大変なことが起こったのではないかとピンときてすぐに起きた。

 

息子たちはぐうぐうすうすう寝ている。

 

メガネをかけ、明るい部屋の光に目を細めながら、「どしたの?」と聞くと、

 

「この前さ、ちょうどダニに刺された人の話してたじゃない、それでさ、ちょっとさ、俺、ダニにかまれちゃったみたい」

冗談かと思った。

 

「え?うそっ」

「ほんと、ふふふ、でもね、なんかダニ、死んじゃったみたい」H氏はほんのり笑ってそう言うのである。

「えっ?死んじゃった?」

「あのさ、死んじゃってるのよ、スプレーかけたら死んじゃった」

「えっ?スプレー?」

起き抜けで夫にダニに噛まれた話をされて怪訝な顔をしている私の前に、H氏は「ほら、ここ」と黒のTシャツをめくっって腹を出した。

 

私は鼻を近づけてじっと見た。

その腹の中腹部、ちょど心窩部と呼ばれる部分の右側に、確かに2mmか3mmの米粒程度の大きさの黒い虫が、ちょこんとぶら下がっている。

 

「ほ・・・ほんとだ・・・・ダニだ・・・・」私はそのとき初めてダニを見た。

「ね、ダニでしょ」

「うん、超ダニじゃん・・・」

 

夫は風呂上がりに上半身裸でふんふんとくつろいでいるときに、なんだかかゆいなぁと思ってダニが噛み付いている部分をさわり、なんとなく指先に違和感を感じて、そのときに初めてダニを確認したらしい。

「あんた風呂はいって体洗ったのに気づかなかったの」

「うん、全然気づかなかった、裸でテレビ見てなかったらもっと気づかなかったと思う。」

私は「へぇ〜」と思った。

 

その後1時間程度の時間をかけてインターネットでダニに噛まれた際の対処方法などについて調べてみたが、どうもすぐに皮膚科に行け、ペットの場合は獣医に見せろ、絶対に自分で引き抜くな、としか書いてないらしい。

 

「あ、あんたも病院に行ったほうがいいんじゃないの・・・」と言いながらまじまじとその部分を観察してみると、

1センチほどに膨れ上がるという噂のダニは2-3mm程度の小ささで、素人の私がみる限りではそんなにH氏の血は吸っていないようだ。

 

ダニにかまわれているらしい周囲の皮膚にも腫脹や発赤は見られず、痛みもそんなにないようで、とにかくいますぐ病院に行かなければならないという様子でもなさそうだった。

 

「でもさぁ、どうするの、これ、普通に抜いていいの?ピンセットで?」心配そうにダニを見つめる私にH氏は説明をする。

 

「俺も調べてさ、タバコの煙をあてると嫌がって出てくるとか、ハッカ油を塗ると嫌がって離れるとか、虫除けスプレーをかけると出てくるとか色々書いてあって、とりあえず虫除けスプレーかけてみようと思ってかけたら死んじゃったの、ダニは噛まれたら口のところからセメントみたいなやつで皮膚と結合するようなもの出るらしくて、それでなかなか取れないんだって」

 

「去年も何人かダニに噛まれて死んだってニュース覚えてる?ほとんどが西日本だったみたいだけど、でもだからといって北海道だから大丈夫ってことじゃないよなぁ」

 

私はH氏の話をききながら、また「へぇ〜」と思っていた。

「でも皮膚科行ったほうがいいんじゃないの、自分でやるの怖くない?」と言う私にH氏は「これちょっとキモいけど見て」と行って、ユーチューブでダニを抜く動画を見せた。

 

そうして「犬もダニに噛まれたら病院いって抜くわけでしょ、病院行って抜くのって獣医ってことでしょ、獣医ってことは俺じゃん、だから抜いてみようかと」と言うのであった(H氏は酪農の牛や馬など大動物の獣医)。

 

俺じゃんって・・でも抜いたこともないくせに・・・と思って2回続けてその動画を見たが、

それは確かにきもかったけど確かにH氏の腹から今まさにぴょこんと出ているダニと同じような外見のダニが、ピンセットで割と簡単に抜かれる動画で、

「あ、これならできるかも」という感じに思えた。

 

「俺これやってみるからちょっと見ててよ」と言うので、わかった、見てる、と返答し、私はH氏のそばで見守った。

 

H氏は「じゃあ抜くよ」とか言いながらダニをネイルのストーンを置くときに使用するようなピンセット(主に我が家では私は鼻の脂を取るときか洗面台の排水溝のゴミをとるときに使用してる)でダニの胴体をしっかり掴み、ぐっと皮膚を伸展させて垂直に引っ張った。

 

そうするとダニがついてる皮膚は2センチくらいにょーんと伸びたあと、ぱつん!という感じでH氏の腹の部分から外れたのだった。

 

「わっ、ぬけたっ」と私はいい、すぐに準備していたティッシュの上においてもらってまじまじみると、うん、なんだからうんうん、たぶん、頭ついてるね、ちぎれてないよ、抜けた抜けた、とれた、よかった!という空気が流れ、

H氏の顔をみると「うん、だいじょうぶそうだなっ」と言って爽やかな表情でダニを見つめていた。

 

「あんた腹膜炎になって自分でオペするブラックジャックみたいだね、かっこいい」と言うとH氏はまんざらでもない顔をして、「へへっ、抜けだでしょ?」と少年のような顔で笑っていた。

 

 

この度H氏は、別に山じゃないんだけどっていうような場所で木を切っただけ、といっていたが、やはり山じゃない場所でも木があるところにダニは生息することが明らかになったし、

長袖長ズボン、カッパに長靴というスタイルで作業していたらしいがダニにかまれたので、首の部分もガードしないとダメだという反省点が浮き彫りになった。

 

「ダニ怖いね、感染症で死ぬ場合もあるし、潜伏期間は6日とか書いてあるからほんと心配」「もし変なウィルスに感染したら8人に1人は死ぬらしい」「治療法はない」「治療法はないけども一応なんのダニに刺されて死んだのかはわかったほうがいいからダニは捨てないで取って置くほうがいいかも」などということを話して、

 

とりあえず7日経つがH氏は元気でいきているし、2mm程度の蚊に刺されたような傷が残っていたがそれも瘡蓋になってほとんど痛みもないらしいので、まずは安心してよさそうだと思う。

 

それからH氏はそれがトラウマになり、ちょっと黒い何かが体についてたり落ちてたりするとダニかと思って「びくっ」となると話してのでそれが後遺症と言えると思う。

 

 

その後H氏の実家で「この前H氏、ダニに噛まれたんだよ」と家族に報告すると、

お義母さんは「かわいそう!昔遠足でパンツの中に入って噛まれちゃって家に帰った子いたよ〜〜〜〜!!!」と言い、

お義父さんは「死ぬんだぞ、ダニは!気をつけろよ!!!」と言ってきたその2時間後くらいに「Uちゃん、あのな、俺も実はな、変な話、玉をダニに食われたことあるんだぞ」とカミングアウトしてきた。

 

お義父さんとお義母さんはどうやらダニは柔らかいところがすき?らしく、睾丸をダニに噛まれた際は痛いし腫れるし最悪で、ほんとそういう場合は病院に行かなくちゃダメだ、ということを教えてくれた。

 

 

そのような一連の経験で私が思ったことは、

 

もし私が家に帰ってきて風呂上がりに自分の腹からダニの体がぴょこんと出ているのを発見したら

「ぎやあああああああああ!」とまず叫ぶのは間違い無いだろうし、

そのあとH氏をパニックになって叩き起こし「とってぇ!!!!!とってとってとってとってっぇぇぇぇxw」と泣き叫び、直ちに自分のK自動車を飛ばして救急外来に飛び込むだろうし、間違いなく涙は出るだろうと思った。

 

しかしH氏は冷静にダニを腹からぶら下げたまま、対処方法について検索したり、対処したり、なんだか色々けっこうすごいし、私ってこういう人と結婚したんだなぁとしみじみ思ったし、

私は絶対にダニにかまれたくないし、息子たちにも噛まれたくないので、できるかぎりの予防をしようと思った、

 

 

というだけの話です。

 

 

今は私が住んでる市内でダニ発生しまくってるらしいので、みなさまもお気をつけあそばせ。

 

 

ということでおやすみなさい。

 


ダニ(ヤマトマダニ)を抜く