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Many and Very

いつ死んでもいいように、なるべくがんばって生きたいだけ。

クワガタの夜

子どもたちが寝た後、

ふと思い立ったのでH氏に「ね、私のいいところってどこ?」と質問した。

 

H氏は「は?」と言いながら、ボソボソと何点か上げた

 

「ほかには?」という追加の質問にもボソボソと何点かあげて、

「そんなのいくらでもあがるよ」と言った。

 

私は少し嬉しくなってしまって、

「じゃあ、私に代わって欲しいと思ってるところってどこ?」と質問すると、

「別に、特にないかな」と言う。

 

「なんかあるでしょ」と念を押して?聞く私に、

「なんかあるかなぁ」とぼんやりしている。

 

「不注意のところは?」

「え?不注意?」

「うん、ものをなくしたり、住所をまちがったり、適当だったり鈍感だったりするところ」

そういうとふぅん、と言う感じで頷いて

「うん、ま、注意はして欲しいときはある」と言っただけだった。

 

 

 

 

H氏はその日、札幌に一泊で遊びにいった帰りで、一日中クワガタのことを考えていたそうだ。

 

我が家のクワガタについては夏にさかのぼる。

職場の先輩からミヤマクワガタのメスをもらって、そのあと知り合いの酪農家さんからオスをもらってきた。

息子はたいへん喜んで、「とととと!とととと!!」とクワガタにトトトト!とクールなあだ名をつけた。朝起きると「トトトト!」夜寝る前も「とととと!」と指差して、背伸びして虫かごの中をのぞいていた。

 

数日後、オスはメスをはさんで投げたりつついたり馬乗りになったりしてものすごく攻撃していてあいつDVだわ、ほんとかわいいそうあのメス・・などと心配していたのに、ふと目をやると長々と1時間くらいじっと後尾していた。

あんなに投げられてたのに交尾してる・・・まさかレイプなんじゃ・・と思ったがどうやらそうでもないらしい。メスもけっこう積極的に局部?というかお腹の部分を突き出していた。

 

クワガタの交尾ははじめてみた。あのお腹のシマシマの部分をお互いにググググググと近づけあって、なにやらちょんちょんと尻尾というかお腹の終わりの部分をくっつけあっていた。衝撃的に気持ち悪かった。

 

これで私が生で交尾を見たことがある動物といえば、サル、ヒト、クワガタ、トンボということになる。あなたは実際になんの後尾を見たことありますか?

 

そうしてそれから幾日かして、メスにDVを繰り返していた最低なオスのクワガタは、夫の手により近所の木の上に逃がされ、息子はその様子をしばらく「トトトト、木、バイバイちた〜」などと可愛い様子で思い出しており、

私の中でもまぁ虫きもいけど、これからは超えなければいけない壁だしなぁ、なんて程度の夏の思い出として刻まれていた。

 

余談ですがオスがメスを攻撃することはよくあるそうで。殺してしまう場合もけっこうあるらしい。そしてクワガタの後尾はものすごく長く、1時間以上も交尾していることもザラにあるので、交尾終了後はお互いにものすごく体力を消耗しているそうです。

どの生き物も後尾はものすごく体力を消耗するんだなぁ。へぇ〜〜〜!

 

そうして夏が過ぎ、秋があっという間に過ぎ去り、冬の入り口になり、メスのクワガタがしばらく生きていた虫かごは、我が家の玄関に放置されていた。

ときどきカサカサというので寒気がしていたが、いつのまにか音がしなくなったので死んだと思っていた。夫いわく、卵を産んだ後死ぬらしい。

 

ある休日、気まぐれでふと思い立った夫がとつぜん虫かごをひっくり返して卵の有無を確認しだした。

小さな虫かごの土の中にはなんとたくさんの卵が産み付けれていて、非常にショックをうけていた。

そっとしておくのが一番いいのに、多分卵なんて産んで無いとおもって開けてしまった、せっかく産んでくれてたのに、俺はなんてバカなんだ、あぁもうだめだ、最低だ、クワガタの卵もったないことした、俺はバカ、みたいなことを一日中ブツブツブツブツとつぶやいていて、クワガタの卵がおそらく終了したことは私にとっては朗報のようなものだったし、夫が1日ぐちぐちとクワガタことを調べたり話したり愚痴ったりするのを見て、実に嫌な気分になった日があった。

 

夫はその一度ひっくり返した土をまたその小さな虫かごの中に戻し、また1ヶ月以上放置した。

 

毎日の玄関掃除のときにどうしても目につく。

玄関の靴箱の上に置かれている虫かごをどかさなければ掃除はできない。

 

私はもうその虫かご自体が嫌になり、ほんと邪魔だし、卵とかきもいし、なんなのもうやだ、生きてるんだか死んでるんだかよくわからんし、いい加減にして欲しいわ、ほんとと思い、こっそりと玄関の中から玄関フード(北海道は風除室という)に移動させ、1ヶ月くらい知らん顔をしていた。

 

その間に秋からぐっと冬になり、最高気温は2度、最低気温は−8度などという11月にしては異例の寒さの中でも放置され、

「もういいでしょ、絶対死んでるでしょ、これ土ごとゴミ焼却所に捨ててこよ〜」とふと約1ヶ月ぶりくらいにその虫かごを持ち上げた瞬間、

 

 

げっっっっ

 

 

てゆーか、幼虫うまれてるんじゃん!!!!!!!!!

 

 

小さな白い幼虫が、キモい様子でまるまって土の中から少し見えていた。

 

 

すげぇ!!!!!生まれてる!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

H氏は札幌に遊びにいっていたので、すぐさまラインで写真を送ると、

 

「まじで!?玄関に入れてあげて!」というメッセージの後に、熊とウサギがハイタッチしているスタンプが送られてきた。

 

 

あんなにずさんに扱ってたのに・・・・うまれてる・・・すごい・・・

 

 

というのがおとといの話で、

それからH氏は昨夜札幌から帰ってくるなり(事故で通行止めのため車中泊してほとんど寝てない)クワガタの繁殖について再度調べまくり、

ホームセンターを2件まわり、100均にいって道具を揃え、

夜な夜な家の中で新聞紙をひいて土をひっくり返して幼虫を1匹ずつプラスチックの容器に分けた。

湿度と温度計まで購入し、クワガタの幼虫のそばにおかれいた。

 

息子はクワガタの幼虫に興味しんしんで、小さくゆっくりとウゴウゴと動いている生き物を、じっとなんども見ていた。

 

私はキモ・・・と思って遠巻きにみていたが、じっと見ていると確かになんだかちょっとかわいく思えて、というより、赤ちゃん、クワガタの赤ちゃん、なんて息子に説明しているうちに、

 

なんか次男の赤ちゃんの様子とクワガタの幼虫が重なって見えてきて、

 

ってゆうか、ちょっと似てない?なんかやわらかいところとか、儚いところとか、周りに静寂をつくりだすところとか・・・赤ちゃんて、生き物の赤ちゃんて、なんかみんな似てるのかも!!!!という気分になった。

 

H氏も「U子もわかってきた!?!?なんか、おれ、あったかい気持ちってゆうか、守らなくちゃっていうか、そんな気分!愛おしい、この幼虫が・・・・!!」などと言って、写真をものすごく撮っていた。

幼虫は明るいところや寒いところが苦手だから早く土をかけてあげようね、などと長男に説明しているわりに

自分はスプーンで幼虫の角度をかえたり、「ごめんね、やだよね、ごめんねぇ、でももうちょっとだから・・・」などとブツブツいってバシャバシャと撮影しており、

私はそれをじっと見て、なんか自分の夫がこの人だと思うと少し不思議だなぁとぼんやり思った。

 

その後ふたりで名前をつけた。

H氏は「1号、2号、3号でいいよ」と言っていたので、

ウノ・ドス・トレス・クアトロという名前に命名し、分けたプラスティックケースにラベルを貼った。

 

 

ラベルと貼った後、H氏は私にコーヒーをいれてくれた。

スタバで新しい豆を購入したそうだ。

 

クワガタ作業もおわり、息子たちも寝静まり、「ふぅ〜」という感じで二人でお茶を飲みながら、

「ねぇあたしのいいところってどこだと思う?」と聞くと、

H氏は「は?そりゃあ、たくさんあるよ」と言うのだった。